東大宝生会
能を知る
室町時代に世阿弥(1363?-1443?)によって大成された日本の古典芸能―ということは有名です。
しかし、具体的にどんなものなのかは観たことないから分からない…という方も多いのではないでしょうか?
このページでは、能がどんなものなのかについて簡単にご説明します。
能は一言で言えば、「和製オペラ」
登場人物が舞台の上で舞い、謡うことでストーリーを表現する芸術なんです。
能の特徴
①物語
物語は基本的に、1人の主人公(シテと呼ばれる)に焦点を当てて展開していきます。
この主人公は、神、鬼、亡霊などの超人的な存在であることが多いです。かっこいいですね。
物語の大筋は、「この世に執着を残して亡くなった人物の霊が、旅の僧の弔いによって救われた」とか、「帝に仕える臣下が旅をしていると、神様が出てきて天下泰平を寿ぐ舞を舞ってくれた」とか、超越的な存在が姿を現して何かするというものが特徴的です。
②出演者
能の出演者は、演技を担当する役者と、楽器を担当する囃子方に分かれます。
さらに、役者はシテ方・ワキ方・狂言方に、囃子方は笛・小鼓・大鼓・太鼓に分かれています。
これらの役割は完全な分業となっています(たとえばシテ方が楽器を演奏したり、大鼓の演奏者が笛を吹いたりということはありません)。
役者の主な役割は次のようになります
・シテ方:主役である「シテ」、シテの助演をする「ツレ」、バックコーラスを担当する「地謡」などを担当します
・ワキ方:シテの心情を受け止めたり、シテと対決したりする「ワキ」、および、ワキの助演をする「ワキツレ」を担当します
・狂言方:狂言方はふだんは能とは独立した演目として狂言を演じていますが、能の中に助演者として登場することもあり、その場合は「アイ(間狂言)」と呼ばれます
各役者と楽器担当はさらに、いくつかの流儀に分かれています。
たとえばシテ方であれば、観世流、宝生流、金春流、金剛流、喜多流の五流に分かれており、流派によって舞い方や謡い方、曲のレパートリー、曲の詞章(セリフ)などもろもろが違います。私たち東大宝生会は、この中でも宝生流の能楽師に師事しています。宝生は質実剛健な芸風と流麗な謡が特徴で、「謡宝生」と呼ばれることも…… ! 身内びいきですが、中の人は先生方の謡を聞いていて本当にうっとりすることがあります
③動き
「摺り足」という独特の歩行方法(上半身の上下動がほとんどなく、舞台をすべるように移動することができます)と、抽象的な動きの「型」を中心としたシンプルな動きです。運動量は作品によって大きく異なります。
たとえば女性が主人公の作品はゆったりとした動きで、中にはほとんど動かない場面もあったりしますが、鬼や神が主人公の作品は、ジャンプや回転、飛び上がって空中であぐらをかきそのまま着地(とても痛い)など激しい動きも入ってきます。激しい動きをする曲の方が体力を使う……かと思いきや、実はそんなこともないのです(ふふふ)
④衣装
シテとツレは「面」(オモテ)と呼ばれる仮面をつけて演技することが多いです。また、シテ、ツレ、ワキ、アイはそれぞれに豪華な装束(衣装)をつけて登場します。地謡と囃子方は、黒紋付に袴姿です
⑤上演場所
全国の能楽堂で、年間を通して公演が行われています。能楽堂は、能や狂言を演じるための特別な劇場です。
能舞台は、正方形の舞台に、出入りのための橋がついた特徴的な形をしています。
狂言との違い
あまり知られていませんが、実は「能楽」とは能と狂言を合わせた呼び方です。
ともに室町時代に猿楽という芸能から発生した舞台芸術ですが、シリアスな雰囲気の能に比べ、狂言はコメディ色が強いです。使われている言葉も、能が文語体で難解なのに対し、狂言は口語体です(もっとも、室町時代の口語体なのですが、現代人が聞いてもほぼ理解できます)。能の上演の前後に狂言が演じられることも多いです。